福祉(介護)タクシーの種類
最近では「福祉タクシー・介護タクシー」という言葉は良く見聞きするようになったと思います。
「福祉タクシー・介護タクシー」といっても一言で表せないほど利用者や利用目的、事業形態によっていくつかの種類に分かれます。
世間一般では、両者をひとまとめで「介護タクシー」と呼んだり、「福祉タクシー」と呼んだりしています。
福祉(介護)タクシーを利用したい方や、その事業での開業・就職を目指す方達に向けて、その種類やそれぞれの特徴を整理してみることにました。
まず、「福祉タクシー」について、管轄する国土交通省では以下のように定義されています。
「福祉タクシーとは、道路運送法第3条に掲げる一般乗用旅客自動車運送事業を営むものであって、一般タクシー事業者が福祉自動車を使用して行う運送や、障害者等の運送に業務の範囲を限定した許可を受けたタクシー事業者が行う運送のことをいう。」
上記の定義から福祉タクシーは、以下のようになります。
- ※一般のタクシー事業者が福祉車両を使用して行う運送
- 障害者等の運送に業務の範囲を限定した許可を得て行う運送
※新たに福祉輸送を行おうとする場合は事業計画の変更が必要です。
一方、「介護タクシー」については定義はなく通称で、主に介護事業者などで使われる福祉車両を指していることが多いようです。
目次
はじめに
まず、旅客自動車運送事業とは、道路運送法の第二条では、以下のように規定されています。(法律の条文ですので、参考程度に見て頂ければと思います。)
「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業であって、次条にあげるものをいう。」
第三条 旅客自動車運送事業の種類は、次に掲げるものとする。
一 一般旅客自動車運送事業(特定旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業)
イ 一般乗合旅客自動車運送事業(乗合旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
ロ 一般貸切旅客自動車運送事業(一個の契約により国土交通省令で定める乗車定員以上の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
ハ 一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約によりロの国土交通省令で定める乗車定員未満の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
二 特定旅客自動車運送事業(特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する旅客自動車運送事業)
以上の「ハ」や「ロ」にあたる事業を更に区別したものが福祉(介護)タクシーになります。
- 一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)※その1
- 一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)※その2
- 特定旅客自動車運送事業
- 自家用自動車有償運送事業
- 福祉有償運送の登録
※ここでは、便宜上「その1」や「その2」といった表現をしています。
各々難しくて覚えにくい名称ですが、大体の形態や特徴をざっと知っていただければ幸いです。
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)その1
根拠法律は道路運送法第四条で、「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)」の許可を受けているものが福祉(介護)タクシーです。
(ちなみに、「一般乗用旅客自動車運送事業」の許可を受けているのが、町でよく見かけるタクシーやハイヤーです。)
① 利用者から見た特徴は以下のようになります。
- 輸送旅客(利用者)は、「要支援者」「要介護者」「身体障害者手帳の交付を受けているもの」などと、利用者は限定されている。
- 輸送範囲は、都道府県単位で営業区域内であれば自由です。例えばショッピングやレジャーなどでも利用できる。
- 家族や付添人も同乗できまる。
- 乗降時の介助は、事業者によっては希望に添えないことがある。
- 運賃については、全額自己負担です。一般のタクシーと同じで地域によって定められた運賃ですので自由に設定していない。
- 運送の依頼は、営業所に電話予約が必要。よって通常のタクシーのように街中で手を挙げて捕まえることはできません。
② 事業者から見た特徴は、①を含めて以下もご参照ください。
- 法人、個人どちらでも開業することができ、異業種からの参入がしやすい。
- 個人の場合、自宅を営業所として開業できる。
- 使用車両は、厳密な規定はありませんが実質※福祉車両が1台必要。
- 運転者は、2種免許が必要です。その他にも※要件がある。
※福祉車両は、車椅子若しくはストレッチャーのためのリフト、スロープ、寝台等の特殊な設備を設けた自動車、又は回転シート、リフトアップシート等の乗降を容易にするための装置を設けた自動車。
※福祉車両を使わない場合は、運転者の要件が以下のいずれかになります。
- 社団法人全国乗用自動車連合会等が実施するケア輸送サービス従事者研修修了者
- 財団法人全国福祉輸送サービス協会が実施する福祉タクシー乗務員研修修了者
- 介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従業者のいずれかの資格を有していること。
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)その2
根拠法律は道路運送法第四条で、「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)」の許可を受けており、尚且つ行政庁から介護保険等の事業者の認定を受けている、通称「介護保険タクシー」です。
「その1」と主に違うのは、介護保険の適用があることと、それにより事業者のケアプランに基づく輸送ができることです。
このことは、利用者・事業者双方から見ても大きな違いのため、私見で「その1」と「その2」に分けさせて頂きました。
「その1」との特徴の違いは以下のとおりです。
①利用者から見た「その1」との特徴の違い
- 輸送旅客(利用者)は、要介護1以上で、一人で公共交通機関に乗れない場合や乗降に介助が必要な場合。
- 輸送範囲は自由ですが、介護保険を適用するにはケアプランに基づく必要不可欠なものに限定される。
- 家族等の付添人の同乗については、原則不可。(自治体の許可が必要)
- 運賃は自己負担ですが、ケアプランの「乗降介助」又は「身体介護」について介護保険が適用される。
- 福祉車両の乗降時・乗車前・乗車後も介助を可能としている。
- 運送の依頼は、基本的にケアマネージャーが調整するため、利用者本人が事業者に連絡することがない。
② 事業者から見た特徴は、①を含めて以下もご参照ください。
- 法人格が必要。
- 介護保険事業者等の指定申請をし、行政庁から指定される必要がある。
- 利用者からの報酬と国からの報酬がある。
特定旅客自動車運送事業
道路運送法第3条による特定旅客自動車運送事業とは、特定の旅客のみを輸送することが条件となりますので、自社の利用者以外を輸送することは許されていません。
例えば、企業の通勤専用バス、学校の通学専用バス、施設等への送迎バスなどです。
これを介護タクシーに置き換えると介護保険法の指定を受けた介護事業所や障害者総合支援法の指定を受けた障害福祉サービス事業所が自社の利用者(会員)に限定し、その利用範囲も限定して行う輸送サービスになります。
この輸送サービスの根拠法が、道路運送法第43条です。
上記「2」の事業所指定を受けていることが前提で、この43条の許可を受けた介護保険タクシーです。
① 利用者から見た「2」との特徴の違い
- 利用者は、施設利用に関する事業所との契約が必要。(事業所の施設利用に付随するサービスの為)
- 輸送範囲は、ケアプランに基づく輸送のみのため、施設自宅間の送迎や通院など必要不可欠なものに限定されている。
② 事業者から見た「2」との特徴の違いは、①を含めて以下もご参照ください。
- 事業所指定を受けていることが前提の為、許可要件が緩和されている。
- 介護保険タクシーとして、単独で不特定多数の者を輸送することができない。
- 介護サービスに付随した形になるため当該許可だけでは介護保険タクシーとして単独で事業を行うことはできない。
- 単独で介護保険タクシーとしても事業を行うには「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)」の許可が必要。
自家用自動車有償運送事業
法第78条第3号の規定に基づく許可で、「2」や「3」の許可を受けた事業所の訪問介護員等(居宅介護従事者を含む)が、その使用する自家用車(白ナンバー)で運送する介護保険タクシーです。
単体で自家用自動車有償運送事業の許可「だけ」を取得することはできません。
あらかじめ「契約事業者と要介護者等との運送契約であること」、「運送責任は契約事業者が負うこと」、「自家用自動車による有償運送であること」を告知して運営します。
また、「法第78条第3号の規定に基づく許可」は、その使用する自動車に対して与えられるものです。車が増えた場合は、新規で許可を受ける必要があります。
自家用自動車の要件として、
- ステッカーなどで「有償運送車両」等の表示を行うこと
- 車内に運賃・料金の表示を行うこと
- 乗車定員が11人未満であること
ドライバーにも要件があります。
- 訪問介護員の資格があること
- 訪問介護員等が運転者として欠格事由に該当しないこと
- 申請日前2年間において無事故であり、運転免許の停止処分を受けていないこと
- 二種免許または一種免許で国土交通大臣認定講習を修了していること
- 任意保険に加入していること
その他
- 送の引き受けは、訪問介護事業所等の営業所のみにおいて行うこと
- 輸送の安全を確保する措置を行うこと
訪問介護員等は、その所属する事業所が受けている許可によって対応が決まるので、その特徴は「2」または「3」の記述に準じます。
福祉有償事業の登録
道路運送法第78条・79条を根拠法として道路運送法施行規則第49条で定められた、自家用有償旅客運送の一つである介護タクシーです。
地域公共交通の活性化及び再生のため、過疎地域での輸送や福祉輸送といった、地域住民の生活に必要な輸送について、それらがバス・タクシー事業によっては提供されない場合に、市町村、NPO法人等が自家用車を用いて有償で運送できることとする制度です。
自家用有償旅客運送(福祉有償運送)の制度改正について(国土交通省)より一部抜粋
「4 自家用自動車有償運送事業」と同じく自家用車(白ナンバー)で運送することができますが、運送主体は市町村、特定非営利活動法人(NPO法人)その他国土交通省令で定める者に限られています。
国土交通省令で定める者とは(福祉有償運送の登録申請者)
国土交通省令で定める者とは(福祉有償運送の登録申請者)
- 一般社団法人又は一般財団法人
- 地縁団体(地方自治法における認可団体に限る)
- 農業協同組合
- 消費生活協同組合
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 商工会議所
- 商工会
- 労働者協同組合
- 営利を目的としない法人格を有しない社団(代表者に定めがあり、かつ、当該代表者が道路運送法79条の4第1項第1号~3号のいずれにも該当しない者であること)
※この運送主体は、実際の運行を事業者に委託することができます。
「4」との主な特徴の違いは以下のようになります。
- 介護保険法による訪問介護事業所又は障害者総合支援法による居宅介護事業所等に指定は不要。
- 運営協議会において福祉有償運送の実施が必要である旨の合意が必要で、合意を得た場合のみ運輸支局に登録の申請ができる。
- 運転者は2種免許又は、一種免許で国土交通大臣認定講習(福祉有償運送運転者講習又はセダン等運転者講習)の修了者
- 運送料金は、運送する地域におけるタクシーの上限運賃の概ね2分の1で営利とは認められない範囲内
- NPO法人や一般社団法人等が、交通移動困難者としてその法人等の会員として加入している”一定の範囲の者”の輸送のみを行う。
国土交通省令で定める者とは(福祉有償運送の登録申請者)
- 一般社団法人又は一般財団法人
- 地縁団体(地方自治法における認可団体に限る)
- 農業協同組合
- 消費生活協同組合
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 商工会議所
- 商工会
- 労働者協同組合
- 営利を目的としない法人格を有しない社団(代表者に定めがあり、かつ、当該代表者が道路運送法79条の4第1項第1号~3号のいずれにも該当しない者であること)
※この運送主体は、実際の運行を事業者に委託することができます。
「4」との主な特徴の違いは以下のようになります。
- 介護保険法による訪問介護事業所又は障害者総合支援法による居宅介護事業所等に指定は不要。
- 運営協議会において福祉有償運送の実施が必要である旨の合意が必要で、合意を得た場合のみ運輸支局に登録の申請ができる。
- 運転者は2種免許又は、一種免許で国土交通大臣認定講習(福祉有償運送運転者講習又はセダン等運転者講習)の修了者
- 運送料金は、運送する地域におけるタクシーの上限運賃の概ね2分の1で営利とは認められない範囲内
- NPO法人や一般社団法人等が、交通移動困難者としてその法人等の会員として加入している”一定の範囲の者”の輸送のみを行う。
国土交通省令で定める者とは(福祉有償運送の登録申請者)
- 一般社団法人又は一般財団法人
- 地縁団体(地方自治法における認可団体に限る)
- 農業協同組合
- 消費生活協同組合
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 商工会議所
- 商工会
- 労働者協同組合
- 営利を目的としない法人格を有しない社団(代表者に定めがあり、かつ、当該代表者が道路運送法79条の4第1項第1号~3号のいずれにも該当しない者であること)
※この運送主体は、実際の運行を事業者に委託することができます。
「4」との主な特徴の違いは以下のようになります。
- 介護保険法による訪問介護事業所又は障害者総合支援法による居宅介護事業所等に指定は不要。
- 運営協議会において福祉有償運送の実施が必要である旨の合意が必要で、合意を得た場合のみ運輸支局に登録の申請ができる。
- 運転者は2種免許又は、一種免許で国土交通大臣認定講習(福祉有償運送運転者講習又はセダン等運転者講習)の修了者
- 運送料金は、運送する地域におけるタクシーの上限運賃の概ね2分の1で営利とは認められない範囲内
- NPO法人や一般社団法人等が、交通移動困難者としてその法人等の会員として加入している”一定の範囲の者”の輸送のみを行う。
国土交通省令で定める者とは(福祉有償運送の登録申請者)
- 一般社団法人又は一般財団法人
- 地縁団体(地方自治法における認可団体に限る)
- 農業協同組合
- 消費生活協同組合
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 商工会議所
- 商工会
- 労働者協同組合
- 営利を目的としない法人格を有しない社団(代表者に定めがあり、かつ、当該代表者が道路運送法79条の4第1項第1号~3号のいずれにも該当しない者であること)
※この運送主体は、実際の運行を事業者に委託することができます。
「4」との主な特徴の違いは以下のようになります。
- 介護保険法による訪問介護事業所又は障害者総合支援法による居宅介護事業所等に指定は不要。
- 運営協議会において福祉有償運送の実施が必要である旨の合意が必要で、合意を得た場合のみ運輸支局に登録の申請ができる。
- 運転者は2種免許又は、一種免許で国土交通大臣認定講習(福祉有償運送運転者講習又はセダン等運転者講習)の修了者
- 運送料金は、運送する地域におけるタクシーの上限運賃の概ね2分の1で営利とは認められない範囲内
- NPO法人や一般社団法人等が、交通移動困難者としてその法人等の会員として加入している”一定の範囲の者”の輸送のみを行う。
※”一定の範囲の者”の例です。(地域によってルールが異なります)
他人の介助によらずに移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシー等の公共交通機関を利用することが困難であるとして、福祉有償運送を行う法人・団体から利用登録された次に掲げる者及びその付添人である場合。
岡山県ホームページより抜粋
イ 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第4条に規定する「身体障害者」
ロ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第5条に規定する「精神障害者」
ハ 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第2条第4号に規定する「知的障害者」
ニ 介護保険法(平成9年法律第123号)第19条第1項に規定する「要介護認定を受けている者」
ホ 介護保険法(平成9年法律第123号)第19条第2項に規定する「要支援認定を受けている者」
へ 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第140条の62の4第2号の基準(基本チェックリスト)に該当する者
ト その他肢体不自由、内部障害(人工血液透析・肝機能障害などを含む)、知的障害、精神障害その他の障害を有する者(自閉症、学習障害などの発達障害を含む)
投稿者プロフィール
- 1965年生まれ:敦賀生まれの敦賀育ちで山羊座A型:特技・どこでも眠れること:性格・慎重かつ大胆:苦手・人混み:好きな番組・NHKの72H:好きな時間・一人の時間と飲み会
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